温泉旅行

土肥温泉 「ゆ~っくり温泉に浸かりたい~!」

 悲鳴に近い女房の訴えに応えて、
 土肥温泉の古い旅館を訪ねた。

 静かな佇まいの庭園が自慢で、
 部屋にオートロックの扉などなく、
 娯楽施設なんかも無くて、
 バイキングじゃなく部屋食で、

 「お早いお着きで。今ならお風呂も貸切状態でございますよ。」

 午後4時前にはチェックインを済ませ、さぁさぁ待望の温泉へいざ!

 が、しかし、哀しいかな、

 そう長く風呂に居られるものでもなく、5時前には風呂を上がってしまい、
 部屋に戻ってすることもなく、テレビを付け、大相撲中継など。

 女房は、やおら、持参した毛糸と編み棒をバッグから取り出し、
 待ちかねていたかのように編み物を始める。

 編み物をしないことがストレスになるほど編み物が好きなのだそうだ。

 そういえば、言われたことがある。定年退職後のことである。
 「私は編み物していればいいけど、あなたは何をしているつもり?」

 何もしなくてもいい時間を何をして過ごすのか、
 答えに窮したまま歳月を過ごしてしまっているけど、
 ぼちぼち答えを持っていないと、定年退職は目の前に迫っている。

 「晩ご飯はまだかなぁ?」


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